卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名山本 圭三・武田 祐佳 年度2025年度
タイトル日本における習字教育の変遷とその不安定性 ――文化性と実用性の葛藤に着目して――
内容 日本の習字教育は、戦後の教育改革において必修科目から一度廃止され、短期間で復活するという、他教科には見られない特異な歴史をたどってきた。習字は、文字技能としての実用性に加え、芸術性や精神文化、さらに日本文化の伝統を継承する役割を併せ持つ教科であり、その多面的性格ゆえに教育制度上の位置づけは長く不安定なままであった。明治期の漢字廃止論、大正期の毛筆廃止論、戦後の占領政策下における必修科廃止と復活、「書写」への統合や分類の変遷を通して、習字教育は常に実用性と文化性の間で揺れ動いてきたことが確認できる。とりわけ戦後は、合理性や能率を重視する教育観のもとで書が「手段」として扱われる一方、書道団体や国会請願では人格形成や日本文化の伝統としての価値が繰り返し主張されてきた。こうした歴史的経緯を整理することで、習字教育が抱えてきた不安定性の構造がようやく明確となり、現代の書道教育においては、技能教育と並行して、伝統文化としての意義をどのように学校教育の中に位置づけ直すかが重要な課題であることが示された。
講評 学校教育における習字の位置づけはなぜ不安定であり続けたのか。その要因を、歴史的な資料を通して検討した労作。習字教育をめぐるさまざまな主張を「和の精神」と「芸術性-実用性」という2つの軸で整理したあたりは、なるほどと感じた。習字教育の不安定さの要因についての説明にも説得力がある。
キーワード1 習字教育
キーワード2 和の精神
キーワード3 伝統
キーワード4
キーワード5