内容 |
音楽を仕事にする人はなぜその仕事や生き方を選んだのだろうか。「音楽で生計を立てるのは難しい」というのは本当なのか。筆者は音楽に関わる人を「音楽のプロを目指す人」「音楽を仕事にした人」「音楽を趣味として楽しむ人」の3つに分類した。まず政府統計によると、音楽を仕事にした人よりも音楽を趣味として楽しむ人が圧倒的に多いことが分かった。いくつかの大学が公表する卒業後の進路統計より、音楽系ではない文系学部の大学卒業生の就職率と比較すると、音楽大学卒業生は就職することが全てではなく、進学や留学などによって音楽家を目指す人が一定数いることがわかった。本論文では、「音楽のプロを目指す人」を音楽を仕事にするという夢を追いかける人と捉え、「夢追い」に関する先行研究と関連づけて追究した。野村駿(2023)は「夢追いライフコース」と「標準的なライフコース」という生き方の違いがあり、後者のみが正しいとみなされる社会構造の歪みを指摘した。さらに野村駿(2023)によると、夢を諦める理由は標準的なライフコースを優先せざるを得ない状況にあり、多様な生き方を認める社会になっていく必要があるという。先行研究の考察をふまえ、バンドマンに密着した野村とは違う視点として、「夢追い」ではないかたちで音楽と関わる進路を選んだ人々の実態を解明するために、筆者は音楽教員2名とホテルスタッフ1名に聞き取り調査を行った。調査結果から、音楽を仕事にすることは難しいかもしれないが、音楽との関わり方は仕事にするだけではなく、「音楽と生きていく」ことは工夫次第で誰にでもできることであると筆者は主張する。 |