| 内容 |
かつて春闘等において、私鉄系の労働組合は頻繁にストライキを決行していた。しかしその運動を牽引していた大手私鉄の組合は1980年代以降、幾度かの例外を除いてほとんどストライキを起こさなくなっている。ストライキ権を含めた団体行動権に対する法的な保護は当時も今も変わらない一方で、一時は相場形成の役割をも担っていた私鉄の春闘で、ストライキはなぜ起こらなくなったのか。労使双方の春闘への向き合い方やその交渉結果の記録、私鉄系組合が支持していた政党の党勢の推移などに検討を加えることで見えてきたのは、団体交渉を強く希求しながらも省力化に伴う組合員の減少で次第に求心力や影響力を削がれていく労働組合と、活動に対するモチベーションを見失う組合員、安定的な労使関係の構築を目指し様々な方法で私鉄春闘の在り方を変え、ストライキ実施のメリットを小さくしていった経営者側の姿勢、それにストライキを次第に受忍しなくなっていった市民の姿であった。そして中央集団交渉の終焉から20年以上を経て個別交渉が定着した今、人口減少という出口の見えない厳しい現実に労使双方が直面する中で、大手私鉄におけるストライキ実施の可能性は限りなく小さいものとなっているのである。 |