内容 |
不登校問題は現代の小・中学校の重要な問題である。特に全国の中学校における不登校生徒数の割合は、1970年代後半以降増加の一途をたどってきた。しかし、その割合は2001年におよそ3%に達した後、横ばい傾向にある。不登校生徒数の割合が増加の速度を緩めた頃、時を同じくして、文部科学省によるスクールカウンセラー派遣事業が本格化している。さらに、不登校問題の解決を図るため同省は「不登校問題に関する調査研究協力者会議」を設置し、2003年にはその後の不登校問題への対応策の基本となる「今後の不登校への対応の在り方について(報告)」を発表した。
筆者の関心は、不登校生徒数割合の増加傾向に歯止めがかかったことと、文部科学省による不登校問題への対応策との関係性を明らかにすることにある。筆者は、不登校生徒数の割合が横ばいになったことは同省による対応策の効果であると推測した。
この推測の真偽を確かめるべく、筆者は公立小・中学校への聞き取り調査を行った。現場の教員やスクールカウンセラーへのインタビューを通して、文部科学省による対応策の直接的な効果は認められないことが明らかになった。不登校とは学校の中での出来事や要因だけが原因ではなく、家庭環境を含む学校外の要因が複雑に絡み合って起こる問題である。したがって文部科学省の対応策では対応しきれないのである。不登校生徒数割合が横ばい傾向にある原因は、文部科学省による対応策以外のところにあると結論づけることができよう。
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