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アメリカは多くの人種・宗教が混在する多文化社会であり、建国以来ホスト社会の中心を担ってきたWASPと非WASPとの接触、対立がアメリカを発展させてきた。アメリカ・プロテスタントは多元化するアメリカをまとめあげる活動の中心にあり続けただけでなく,世界のキリスト教文明化をも進めていた。こうした国内外における多文化状況を統合化しようとしたアメリカ・プロテスタントの活動をみる際、1893年コロンビア万国博覧会の一環として開かれた世界会議「世界宗教者会議」は上記の構図が明らかである好例である。
先行研究において、会議には様々な宗教の代表が参加し、キリスト教参加者(主催者側)と非キリスト教参加者の異なる思惑が衝突していたことが明らかになっており、二項対立で描かれている。本稿では会議の議長であったバロウズが残した議事録を元に、カトリック参加者の会議へ対する反応や、主催者側であるプロテスタント内部からの意見の対立を明らかにする。また、この会議に出席した非キリスト教代表者で、東洋宗教(ヒンドゥー教)の布教に成功したヴィヴェカーナンダの世界宗教者会議での成果・会議への影響を論述する。これら二点を踏まえ新たな世界宗教者会議像を考察することが、本稿の目的である。
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