内容 |
今、世界がアジアに注目している。日本を含む先進諸国が不況にあえいでいる中、中国やインドを筆頭に高度経済成長を続けているからだ。先進諸国は、そのような成長の著しいアジアの市場を自国の市場と結び付けることのよってこの危機を克服しようとしている。一方、成長を続けるアジア諸国でも、1990年代以降、グローバル化の波が押し寄せることとなり、高度成長とともに世界という舞台で活躍できる人材の育成の必要が生じてきた。そこで、これまでごく一部の富裕層のみが享受してきた高等教育がその役割を果たすことが期待され、改革が行われることとなる。無論各国によって改革の方向性は多様であるが、本論文では、マレーシアの高等教育に焦点を当てる。マレーシアは、人口2791万人(2010年)ほどの多民族複合国家で、複雑な民族問題、特にマレー系と中国系との問題を抱えている。少数派である中国系やインド系が経済の実権を握っており、マレー系優遇のブミプトラ政策で経済格差の是正を図っている。
このような複雑な民族構成の多民族国家の中で高等教育は経済発展だけでなく、国民統合という使命も担っている。この2つの究極の目標をどのように実現してきたのか、あるいはどのような課題があるのかを明らかにする。また、マレーシアの高等教育がどのようにグローバル化に対応しているのかを明らかにすることで、今後の日本の高等教育の在り方を考察する。 |