| 内容 |
本論文は、テレワークの導入と定着の過程を通じて、働くことや出社することの意味、ならびに組織文化や働き方の価値観がどのように変化したのかを明らかにすることを目的とする。新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、日本企業においてテレワークは急速に普及し、感染対策としての役割を超えて、働き方そのものを問い直す契機となった。先行研究に基づき、働く「時間」と「場所」の設計、および業務における集中・活力・協力の観点からテレワークの影響を理論的に整理した。さらに、企業へのインタビュー調査を通じて、テレワークの運用実態を分析した結果、導入初期に指摘されがちなマネジメント不安やコミュニケーションの減少は制度設計や運用の工夫によって一定程度克服され得ることが示された。また、テレワークの最適な実施頻度や運用方法について一定の調整を終えた組織では、導入可否や頻度の是非を問う段階を超え、働き方の質や業務プロセスの高度化といった次の課題へと移行している可能性が示唆された。さらに、テレワークの最適な実施頻度は一様ではなく、業務特性やジェンダーを含む個人属性によって異なる可能性が示唆された。以上より、テレワークの定着は出社の必要性を否定するものではなく、出社の意義を再定義するものであり、出社は協力・連携・信頼を構築するための場として相対化されつつあると結論づけた。 |