| 学科 | 産業関係学科 | ゼミ教員名 | 寺井 基博 | 年度 | 2025年度 |
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| タイトル | 自律的キャリア形成とリスキリングの両立困難性 | ||||
| 内容 | 本論文は、自律的キャリア形成とリスキリングが強調される近年、日本企業では両者の両立がなぜ難しいのかを明らかにすることを目的とする。自律とは組織ニーズの把握と相互調整を前提とするにもかかわらず、現場では「自律的に学べ」と個人に要請が集中している。 先行研究に加え、児島(2024)の尺度探索結果を手がかりに、個人の実践を規定する組織要因を「制度化」「方針・スキルの可視化」「伴走支援・スキル活用」の三因子として整理した。さらに、メンバーシップ型雇用による職務不在、管理職のプレイング化、年功的評価の硬直性が三因子の循環を寸断し、権限は組織に留保されたまま責任のみが個人化される構造的矛盾を示す。戦略と人材方針の言語化、学習時間・費用の担保、中立的相談機能と配置・挑戦機会の明示により「回路の再接続」を図る必要性を論じた。 これにより、リスキリングが労働移動や生産性向上へつながりにくいというメカニズムを説明する。産業・規模・職種差の検証は今後の課題である。 |
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| 講評 | 先行文献が読みこまれたよい文献研究論文である。本論文は、自律的キャリアが進まない原因は労働者の意識や学習意欲によるものというよりも、制度が整っていない点にあると指摘する。これは的を射た指摘である。しかし、本論文は、リスキリングが功を奏しない要因として、日本企業が「ジョブのスキルを重視しない」ことを指摘するが、これは、日本企業の特徴とされてきた年功賃金が勤続とともにスキルが向上することによって実現されているとする小池和男の熟練論とは認識が異なる。NVQはその資格に見合った市場賃金という裏付けによって実効性が保たれており、「日本版NVQ」が定着しなかったのは、賃金との紐づけがないことに原因がある。それは、労働力の内部調達とそれに基づく組織内賃金を堅持する日本企業の人事方針と「日本版NVQ」の基本枠組みが合致していない点にある。また、賃金との紐づけがない職業資格では、労働者の自律的キャリア形成も進まない。この点については、これから仕事をする経験の中で引き続き考えてもらいたい。 |
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| キーワード1 | 自律的キャリア形成 |
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| キーワード2 | リスキリング |
| キーワード3 | メンバーシップ型雇用 |
| キーワード4 | |
| キーワード5 |