卒業論文詳細

学科メディア学科 ゼミ教員名伊藤 高史 年度2025年度
タイトル好きだからこそ起こる炎上 ―ファンコミュニティ内部における炎上の分析
内容 本研究は、同じ対象を応援するファンのあいだで生じる「内部炎上」がどのように発生し、広がっていくのかを明らかにすることを目的とする。従来の炎上研究は、外部アンチによる攻撃を中心に扱ってきたが、近年はファン同士の価値観の違いが対立として表れ、炎上状態に発展する例が増えている。本論文では、timelesz 公開オーディションと LE SSERAFIM のコーチェラ出演後の歌唱議論という二つの事例を分析し、内部炎上の特徴を考察する。
 timelesz の事例では、長く応援してきたファンほどグループの歴史や物語を大切にしており、新加入が「積み重ねの変更」と映ったことで、不安や拒否感が生まれた。一方、LE SSERAFIM の炎上では、世界的な舞台での成功を願う期待が強く、歌唱面への指摘がファン内部から噴出した。両者に共通するのは、批判が嫌悪からではなく、「こうであってほしい」という理想が満たされなかったことによって起こった点である。
 さらに本研究では、筆者自身が炎上中の議論に参加し、その反応を観察した。SNSでは、直接コメントがつかなくても、いいねや表示回数といった簡易な反応がすぐ目に入り、それだけで「読まれている」「賛同されている/されていない」という感覚が生じやすい。また、多くのユーザーは対立を避けるため意見を言葉にせず、いいねだけで態度を示す。その結果、反応が沈黙のまま蓄積し、誰がどの立場なのかが曖昧なまま賛否が積み重なり、いつのまにか意見のズレが大きくなっていく。筆者の投稿にもリプライはなく、しかし一定数の反応が見られ、こうした静かな反応こそが発言者の気持ちや見え方に影響を与えることが実感として確認できた。
 以上を踏まえると、内部炎上は ①強い愛着と期待、②沈黙のまま積み重なる反応が意見のズレを大きくするSNS特有の状況、③ファン同士の立場が徐々に分かれ対立が深まる過程 の三つが重なって生じる現象と言える。内部炎上はコミュニティの軋みであると同時に、その集団が何を大切にし、どのような理想を抱いているかが浮かび上がるプロセスでもある。本研究は、従来の「外部からの攻撃」としての炎上理解を超え、ファンダム内部の感情の動きを中心に内部炎上の構造を捉える試みである。
講評 ソーシャルメディアでの炎上について、実例を紹介し、その要因を分析すると同時に、自分でソーシャルメディアに「炎上しそうな投稿をする」という実験を行っていただきました。実際に投稿が炎上しなかったことは、卒論を書く上ではつまらなかったかもしれませんが、教員としては安心いたしました。この実験はなかなか勇気を必要とするものだったと思いますので、その点は十分に評価に値します。
キーワード1 炎上
キーワード2 ファンコミュニティ
キーワード3 SNS
キーワード4 アイドル
キーワード5 アーティスト