卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名立木 茂雄 年度2025年度
タイトル社会的逸脱と回復の動態—G.H.ミードの社会的自我論を手掛かりに—
内容 本研究は、不登校およびその後の社会的隔絶と回復の過程を、G.H.ミードの社会的自我論を理論的枠組みとして分析したものである。従来の不登校研究が個人の心理的要因に焦点を当ててきたのに対し、本研究は筆者自身の経験を自己エスノグラフィーの手法によって再構成し、自己理解の変容を社会的関係の変化として捉え直すことを目的とした。分析の結果、学校という強固な規範的空間において形成された否定的な自己理解(me)が、行為主体としての応答(I)を制限し、社会的隔絶へと至る過程が確認された。一方で、スターバックスという比較的弱い規範性を持つ場における他者からの承認を通じて、新たな一般化された他者が形成され、社会的自我が再構成されていく過程が明らかとなった。本研究は、不登校や回復を個人の内面の問題に還元するのではなく、社会的規範との関係の中で動態的に捉える視座を提示するものである。
講評 本論文は、G.H. Mead の社会的自我論を理論的枠組みとして、不登校や社会的隔絶、そして回復に至るプロセスを、筆者自身の経験を素材とした自己エスノグラフィーによって分析した、きわめて野心的かつ完成度の高い研究です。本論文は、3回生前半で扱った Mead を単なる理論教材としてではなく、自身の人生を意味づけ直すための理論的装置として徹底的に読み込み、I・me・一般化された他者の三項関係を用いて、これまでの人生の転換点を実証的に描き出しました。読み進める中で、読者は社会的排除や否定的自己理解が形成されていく過程に「痛み」を伴って共感しつつも、新たな居場所や出会いを通じて一般化された他者が更新され、I が再び立ち上がっていく局面では、「ホッとする」感覚を共有することになります。本論文は、逸脱や回復を個人の内面の問題に還元せず、社会的関係の動態として捉え直す視座を鮮明に提示しており、社会学的ドキュメンタリーとしても強い読み応えをもつ卒業論文に仕上がっています。
キーワード1 社会的自我
キーワード2 自己エスノグラフィー
キーワード3 自己関係性の変容
キーワード4
キーワード5