| 学科 | 社会学科 | ゼミ教員名 | 立木 茂雄 | 年度 | 2025年度 |
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| タイトル | ネパールにおけるフィールドワークからみる贈与規範 | ||||
| 内容 | 本研究は、ネパール・パシュパティナートにおけるフィールドワークを通じて観察された親切行為・利他行動を分析し、それらがどのような社会的条件のもとで生起し、どのように経験されるのかを検討した。返礼を前提とする互恵規範では説明しきれない行為に着目し、Ruth Leeds(1963)の贈与規範を理論枠組みとして用いた。分析対象は三事例(A・B・C)であり、突発的状況への即時的介入、宗教的価値の一方向的提示、擬似家族的関係の導入という異なる親切の様態が確認された。これらはいずれも社会的空白・役割空白のもとで生起しており、贈与規範が相互行為を成立させる条件として機能していた。一方で、贈与は常に肯定的に経験されるわけではなく、価値の重さや関係規定の非共有によって、距離や違和感、非対称性を生む場合もあった。本研究は、親切や利他行動を一様な道徳的行為として捉える視点を相対化し、社会的条件のもとで多様に作動する実践として捉え直す視座を提示する。 |
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| 講評 | 本論文は、ネパールにおける継続的なフィールドワークを通じて、親切や利他行動がどのような条件のもとで生起し、いかなる意味をもつのかを理論的・実証的に検討した質の高い研究です。大学サークルでのNGO活動を契機に築いた現地との関係を基盤として、筆者は繰り返しネパールに赴き、少数例に対する体当たり的なアクションリサーチを敢行しました。その行動力とフィールドへの深いコミットメントは特筆に値します。分析においては、Ruth Leedsの贈与規範論を理論枠組みとして援用し、互恵規範では説明しきれない親切行為の成立条件と両義性を、具体的な相互行為の記述から丁寧に描き出しています。特に、社会的・役割的な「空白」の中で贈与規範が多様な形で作動する過程を、行為介入型・価値伝達型・擬似家族型として整理した点は、学部卒業論文の水準を超える理論的達成と言えます。現場に身を置く実践と抽象度の高い理論的考察とを往還させた本研究は、文化や地域を超えて利他行動を捉え直す重要な視座を提供しています。 |
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| キーワード1 | 贈与規範(the norm of giving) |
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| キーワード2 | 社会的・役割的空白 |
| キーワード3 | 役割空白 |
| キーワード4 | 利他行動の非対称性 |
| キーワード5 |