卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名立木 茂雄 年度2025年度
タイトルSNSアカウントの使い分けと自己受容の実態
内容 本研究は,近年若者の間で一般的となっているSNSアカウントの使い分け,そしてそこに生じる乖離を捉え,Rogersの理論を手掛かりに,男子大学生(Aさん)の自己受容の実態を明らかにするために行なった.具体的には,コレスポンデンス分析を行なった上で,投稿内容の差やそれに付随する真意の差,そして表現や語の用いられ方の差を明らかにした.結果として,「愛・称賛」といった対象への肯定的な感情が裏アカウントで相対的に多く表出していた一方で,「悲観・メンタル」,「自責・後悔」といった否定的な感情が表アカウントで相対的に多く表出していたことが明らかになった.このことから,Aさんは否定的な側面に対しては自己受容が進んでいる一方,ポジティブな側面に対しては自己受容が十分に進んでいない可能性が考えられた.加えて,表アカウント=理想的な自己の演出の場,裏アカウント=ネガティブな感情の吐露の場という一般的な通説も部分的に否定された.その一方,他者の視線の強度に応じて自己呈示の強度が調整されており,自己受容度は感情の種類や対人文脈によって大きく揺れ動く可能性が示唆された.
講評 本論文は、SNSにおける表アカウントと裏アカウントの使い分けという現代的実践を手がかりに、自己受容のあり方を理論的・実証的に検討した意欲的な研究です。Rogersの自己理論を明確な理論的枠組みとして据えた上で、SNS投稿の全量を対象に、AIとの対話を通じてカテゴリーを生成・洗練させるという方法を採用し、短期間で理論的にも説得力のある12のコードを構築しています。さらに、それらのカテゴリー間の共起関係を数量的に解析することで、感情表出と自己呈示の構造を多角的に明らかにしました。特に、裏アカウントにおいてポジティブな感情が相対的に多く表出しているという結果は、従来の通説に再考を迫る重要な知見です。本研究は、KH CoderやSPSSといった従来の定番ツールに依存せずとも、研究目的を明確に据えれば、AIを活用した新たな質的・量的分析が可能であることを示しています。手順ではなく「何を明らかにしたいのか」が研究の核心であることを強く示唆する点でも、学部卒業論文としてきわめて完成度の高い成果と言えるでしょう。
キーワード1 自己受容
キーワード2 SNS
キーワード3 自己呈示
キーワード4
キーワード5