| 内容 |
本研究は、「ジェンダー平等の優等生」と見なされてきたテニス界における、達成された平等の裏側に潜む構造的な格差を解明することを目的とする。グランドスラムにおける賞金同額化という制度的達成が、テニス界全体の構造的平等を意味するのか、あるいはトップレベルの華やかさが深層の歪みを不可視化しているのかを問うものである。
第二に、トップ選手の収入構造分析では、賞金(オンコート)においては女子世界1位の選手が男子トップと同等以上の報酬を得ており、実力主義が機能していることが確認された 。しかし、スポンサー収入(オフコート)においては、怪我でほぼ稼働していない男子選手(ナダル)が現役の女子世界女王(シフィオンテク)を大きく上回るなど、市場価値評価における深刻なジェンダー・ギャップが浮き彫りとなった。
これらの結果から、テニス界の平等は、政治的・社会的介入が働くトップ層という「平等のショールーム」に限定された現象であると結論づけた。下位大会やスポンサー市場で見られる格差は、単なる「人気(需要)の差」ではなく、メディア露出の制限や歴史的に構築された「男性=主役」という象徴的序列が、市場原理という隠れ蓑を通じて再生産された結果であることが明らかになった。本研究は、制度的な「同一労働同一賃金」の達成だけでは解消されない、資本主義市場の評価システムや文化的なジェンダー観に深く根ざした「新しい形の差別」のメカニズムを提示した。 |