卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名森 千香子・木戸 衛一 年度2025年度
タイトルドラァグクイーン・D.K.ウラヂのドラァグの実践——異性愛規範に対する「破壊」と「適応」——
内容 本研究は、ドラァグクイーンをジェンダーが演じられたものであることを可視化し、異性愛規範を撹乱する存在として位置づけてきた先行研究の理論に対し、実践者の語りをもとにその意味を再検討することを目的とする。関西におけるドラァグシーンの黎明期から活動してきたトランスジェンダー女性で元ドラァグクイーンのD.K.ウラヂへのインタビュー調査を行い、ドラァグクイーンになるに至った契機および引退に至る経緯を分析した。その結果、ウラヂのドラァグ実践の原点は、異性愛規範を政治的に破壊する意図にあるのではなく、「人外」への変身願望や、憧憬の対象を模倣する欲望にあったことが明らかとなった。過剰な女性性を纏うことで「人外」の域に達したウラヂは、ドラァグに政治性や世俗性を持ち込まないという価値観を有していた。また、引退理由の一つとなったコンプレックスの治療は、規範的な美への接近という点で異性愛規範への「適応」を意味し、同時に規範を「破壊」するための武器の喪失につながったことが明らかとなった。
講評 自分にとって身近なテーマを選び、友人や知りあい、それらを介して調査を行って書く卒論が多いが、本研究はそれとは真逆のテーマ設定を行った。それまで全くかかわりのなかったドラァグクイーンの世界に飛び込み、クラブなどに足を運んで関係づくりに励み、話をきかせてもらう。こうして得られたD.K.ウラジへのインタビューは一人を対象としているが、とても密度の濃い内容の語りをひきだすことができた。通常の社会規範を転倒させるドラァグの世界に内在する複数性や、ドラァグクイーンという自分にとっての他者の合理性を検討して、一つの問いを立てることに成功した。そして何よりも、この調査に本気で取り組み、他者の合理性を自分なりに理解しようという経験を通して、自分自身に変化が生まれたことが最大の収穫だったと思う。この経験を今後も大切にしてほしい。
キーワード1 ドラァグ
キーワード2 ジェンダー撹乱
キーワード3 異性愛規範
キーワード4
キーワード5