卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名藤本 昌代 年度2025年度
タイトル平成レトロブームは起こるべくして起こったのか?
内容 本稿では、SNS上のテキストデータ100件をKH Coderで分析し、先行研究と併せて検討した結果、平成レトロブームは偶発的な流行ではなく、現代の社会構造とメディア環境の変化によって必然的に生じた現象であると結論づけた。分析から、第1に、個人的な懐かしさと現代的美意識が結びつくノスタルジーの多層性、第2に、アナログな質感や対面的コミュニケーションへの回帰願望、第3に、SNSを媒介とした個人の感情と商業活動の循環という三つの特徴が明らかになった。平成レトロブームは、マスメディア主導の昭和レトロとは異なり、SNSによって「小さな記憶」が集団的に増幅された現象であり、デジタル化が進む現代社会における無意識的なカウンターカルチャーとして、「起こるべくして起きた」ブームであった。
講評 本稿は、平成レトロが流行している理由について調べた研究である。調査では、昭和レトロの流行と構造的違い、情報の消費のされ方の違いなどを明らかにするために、SNSの書き込みをダウンロードし、KHコーダーにより分析している。本研究は分析枠組みとしてはボードリヤールの制度や文化の痕跡の残存、 ルシクラージュの概念、タルドの模倣論、髭白のイミ消費、トキ消費等から仮説を構築し、分析を行っている。分析では、昭和レトロのようにかつて昭和中期の高度経済成長期を経験した世代が高齢化し、懐かしむ現象であったものとは異なり、平成レトロの場合、女子高生など、現在の若者によって新しい存在として、感性に訴えるものとして消費されていることなどを析出している。考察では仮説検証として、平成レトロは仮想経験ノスタルジーであること、普遍的な価値をもつものと消費者に評価されていること、触覚や嗅覚を伴うリアルなつながりへの潜在的な渇望があり消費されていること、SNSによる模倣を促すことがルシクラージュの一貫として参加されていること、トキ消費の希少性が評価されていること、個人的なイミ消費を行っている人々による流行であること等、優れた議論を行っている。本研究は理論的枠組みを組み立てるのには先行研究が少ないという意味で難易度が高い流行に関する現象を対象としながら、古典をはじめとする文献を根気よく読み、理論的枠組みを構築し、KHコーダーでの実証分析を行い、考察で理論的枠組みに触れて展開し、論理的に書かれた秀作といえる。
キーワード1 平成ブーム
キーワード2 SNS
キーワード3 ノスタルジー
キーワード4
キーワード5