卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名藤本 昌代 年度2025年度
タイトル現代社会における理想の父親像 ―『クレヨンしんちゃん』野原ひろしの分析から―
内容 本稿は、現代において野原ひろしがなぜ「理想の父親」として評価されるのかを分析することを通じて、現代的父親像の特徴を明らかにすることを目的とした。分析の結果、野原ひろしは、家族の感情に即応する高度な感情的ケア、権威に依拠しない協調的関係の構築、ユーモアや弱さを含む親しみやすさ、さらに家庭外への配慮といった多面的特徴を示していることが確認された。これらは、規範維持型の磯野波平や、周辺的・受動型のさくらヒロシとは質的に異なるものであり、比較分析により、ひろしが現代における理想の父親像の要素を体現していることが明確となった。ひろしの行動は、従来母親に依存してきた感情的ケアを父親役割に組み込み、家族の交流・世話・情緒的支援を自然に実践する点で先進的である。以上より、野原ひろしは、責任性と親密性を両立させた「ケアリング・マスキュリニティ」の典型として、現代社会における理想の父親像を具体的に示す存在であると結論づけられる。
講評 本稿は、アニメを通して、理想の父親像の変化について調べた研究である。調査では、クレヨンしんちゃんの父親である野原ひろしの評価を中心に、比較対象としてサザエさんの父親である磯野波平、まる子ちゃんの父親であるさくらヒロシについて、それぞれの時代の特徴を捉えるために時代を区切って放送回を観察、分析している。本研究は従来の男性学ではない観点からの男性像に着目し、また、家族のあり方について家族社会学のアプローチから仮説を立てており、理論的枠組みがしっかり書けている。分析では、波平らの時代の家父長的な父親像、ヒロシらの時代の母親に任せきりになりがちのコミットメントの薄い父親像に対して、ひろしは遊び相手であったり、励まし役であった、ミスをして子供に謝る姿勢があったりという従来の父親とは異なる不完全性や協調性の高さなどを析出している。考察では先行研究で触れた理論をもとに、ひろしがかつての家父長的、権威的な父親像ではなく、より親密度、ケア力が高く、関係性を築ける存在であり、それが現代での「理想の父親」たらしめていることを議論している。本稿は理論的枠組み、実証分析、考察まで論理的に書かれた秀作である。
キーワード1 理想の父親像
キーワード2 感情的ケア
キーワード3 関係性志向
キーワード4
キーワード5