卒業論文詳細

学科メディア学科 ゼミ教員名勝野 宏史 年度2024年度
タイトル都市空間と道とのあいだで動き続ける場所-京都市祇園町における路地を事例に
内容 本研究は、観光地化された京都市祇園地区の路地を事例に、路地で展開される土着的な実践に着目し、空間と場所の相互作用がどのように観光地と住民の関係性を再構築し、空間性を生成するのかを考察することで、観光地化による都市と人間の関係性の新たな理解を提示することを試みる。同地区内で行われる役員会議に筆者も参加しながら現地の人々5名を中心に6月中旬から7月中旬、10月上旬に聞き取り調査を行った。様々な学問分野において空間と場所は論じられてきたが、場所は土着のアイデンティとされる場であり、空間は科学者(政府、建築家など)によって同質的に形成される場とし、後者が前者を恣意的変容させるという見方に基づいている。本研究では、「空間/場所」研究における認識論的な分析枠組みを超え、場所は空間と歴史と「道」の不可分的な関係性に基づいた実践が展開されるインフラストラクチャ―であると論じることで、同研究についての議論を人類学的インフラストラクチャ―研究の文脈に位置付ける。
講評  本研究は、祇園地区の路地を事例に、観光地化と住民の関係性の変化を考察し、空間と場所の関係を再検討する点で興味深い。「空間/場所」の二元的枠組みを超え、場所を歴史や「道」との関係で捉え直す視点は、人類学的議論への新たな貢献となり得る。フィールドワークとして役員会議への参加や住民への聞き取り調査を行っている点は評価できるが、対象者が5名と限られている。より多くの異なる立場の住民の視点を整理できていれば、議論の深みはもっと増しただろう。また、「インフラストラクチャー」としての分析をどの理論的枠組みに基づいて行うのか、より明確に示す必要がある。さらに、路地の具体的な変容事例を取り上げることで、観光地化が住民の実践にどう影響を与えているのかをより明確にできる。総じて、空間と場所の相互作用を「道」の視点から捉え直す試みは意義深く、フィールドワークの精緻化と理論の明確化によって、より説得力のある研究へと発展できるだろう。
キーワード1 空間
キーワード2 場所
キーワード3 インフラストラクチャ―
キーワード4
キーワード5 物質性