卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名松山 一紀 年度2024年度
タイトル労働者から労働者へ伝染する残業意識 ~これからあるべき上司と部下の関係性~
内容  本論文は若年労働者の残業に関する意識とその背後にある要因を探り、残業が労働者自身の意志によるものなのか、企業側の意図や上司の影響を受けているのかを問う。そして部下に対する上司の働きかけが、モチベーションの向上に影響を与え、そのモチベーションが残業に繋がるケースがあることが分かった。またそのような労働者を見た、他の労働者が同調圧力を感じてしまい、また残業をするといったことから、残業意識が労働者から労働者へ伝染しているということになる。残業意識が伝染することで、企業全体で残業の文化が形成されていることから、適切な労働時間管理が重要である。しかし、過度な残業が健康やメンタルに悪影響を与える一方で、残業はワークモチベーションの消化のために必要であるという考えもある。実際に、一定の残業がモチベーションの向上や成長の機会を提供する場合もある。残業意識の伝染を防ぐため、企業は残業削減を目指しつつ、必要に応じて残業をするなどの、個々の労働者に合わせた柔軟な働き方を提供する必要があるだろう。また上司が部下の残業に影響を与えていることから、上司も部下もお互いの関わり方について吟味していくことが、これから求められる課題ではないだろか。
講評 本研究の論旨は少々込み入っている。働き方改革が叫ばれる現代日本において、残業は悪であるという一方的なラベリングに違和感を覚えたことが契機となっている。残業は全てが悪というわけではなく、個人の自発性の有無こそが重要なのだと考え、議論を展開していく。組織で働いている以上、上司や同僚からの影響力は強く、特に上司が残業をすれば、それが部下にも伝染していく。部下自身も気づかないうちにである。つまり、そこで他律的残業が生まれてしまうのである。一方で、自発的な残業は「モチベーションの消化」という観点からは望ましいとする。本研究は、多くの先行研究を渉猟し、ときには、迷路に入り込みそうになりながら、深い議論を展開している点が評価できる。本年度、松山ゼミの優秀論文としたい。
キーワード1 若年労働者
キーワード2 残業
キーワード3 フォロワーシップ
キーワード4 やりがい搾取
キーワード5 ワークモチベーション