卒業論文詳細

学科教育文化学科 ゼミ教員名奥井 遼 年度2024年度
タイトル学校を再評価する ―社会化機能に着目して―
内容 本稿では、京都市にある2校の義務教育学校でのフィールドワークと、愛媛県の公立中学校での教育実習をもとに、学校で行われている教育活動や子どもたち、子どもと教師との間の相互行為を記述し、学校が担っている役割の再考を促すことを目指す。そのために「社会化」という概念を用いて考察を進めていく。社会化とは、社会の価値規範を共有するために心身を発達させていく人間形成的な作用である。日本の学校教育では、クラスという単位で教育活動が行われる。クラスは他者と出会う場であり、そこでの相互行為には社会化、人間形成に大きく寄与する場が多くみられる。学校、クラスにおける人間形成を促す活動について社会化を軸に考察していくことで、現在批判的に語られることの多い学校教育が担う役割を再検討・再評価することになり、今一度学校の役割やこれから目指すべき場所を考えるきっかけとなるだろう。
講評 学校教育に対する批判的言説が絶えない今日、公教育において集団で学ぶことの意義を改めて論じようとする意欲作である。筆者は小学校での1年以上にわたるボランティア活動のなかで、あるいは教育実習の経験をふまえ、学校において他者を包摂しようとする不断の努力(筆者はひとまず「同質性の構築」と呼ぶ)が、家庭とも地域社会とも異なる特別な空間を生み、子どもたちの学びの基盤としての「社会化」を促すことを論じる。また調査の副次的な成果として、小学校が必ずしも外部ボランティアを有効に活用しきれないなど、制度やコミュニケーションの柔軟性をめぐる問題点も鋭く指摘する。同質性を生み出そうとする教員の日々のささやかで巧みな関わりや、子どもたちの飛躍など、学校の中の日常的な、しかしかけがえのないドラマを描き出す本稿は、今後、希望をもって学校について語り直すための道しるべとなりうるだろう。
キーワード1 学校経験
キーワード2 クラス
キーワード3 社会化
キーワード4 同質性
キーワード5 相互作用