学科 | 教育文化学科 | ゼミ教員名 | 奥井 遼 | 年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|---|---|
タイトル | 学ぶ目的を「ある存在様式」からアプローチする ―10日間瞑想実践・ピアノ独学を通じて― |
内容 | 本稿では、エーリッヒ・フロムの「ある存在様式」と学習論を結びつけ、学びの目的と在り方に再考を促すことを目指す。フロムは、現代人の孤独に関する探究から「所有」を重視する「持つ様式」ではなく、それに対抗する「ある様式」、すなわち世界と連帯するありようの重要性を説いた。本稿では、この議論を基盤に、10日間の瞑想実践とピアノ独学の一人称記述を通じて、「ある様式」に基づく学習論の可能性を探る。具体的には、瞑想によって「あること」に関する人間観を実践的に理解し、ピアノ独学において「持つ様式」と「ある様式」がそれぞれ練習場面で生起することを示す。この記述により、「あること」をめぐって従来論じられてきた抽象的な視点からではなく、より具体的でラディカルな学習論を構築する糸口が見出された。「ある様式」の学びとは、競争や成功に囚われず、幸福を追求するものであると同時に、「持つ様式」との錯綜性を自覚しつつ、「あること」に立脚する批判的能動的努力の中で成立することを示した。 |
---|
講評 | 学ぶことによって獲得される知識や技能が、将来のためであれ競争に勝つためであれ、他者に対する自身の優位を確認したり、自身に対する価値づけを行う作業として位置付けられがちな今日の状況に強い違和感を覚えた筆者が、それらの目的論から距離をおきながら学習について論じるために「独学」に活路を見出した。本稿は、ピアノを一人で学ぶことに端を発し、のちに瞑想実践と結びつき、またフロムの思想によって裏打ちされたユニークな学習論である。学ぶことが「所有」に帰結するのではなく自己の「ありよう」を醸成することにつながるという解釈を基軸として、瞑想実践およびピアノの演奏中の変容を、自らの存在の基盤へと遡り、世界との結びつきを改めるような方途(それを筆者は「批判的能動的努力」と呼ぶ)として描き出す。テーマも方法も独自に積み上げられたユニークな研究成果である。 |
---|
キーワード1 | フロム |
---|---|
キーワード2 | ある存在様式 |
キーワード3 | 学習論 |
キーワード4 | 瞑想 |
キーワード5 | ピアノ独学 |