卒業論文詳細

学科教育文化学科 ゼミ教員名奥井 遼 年度2024年度
タイトルカウンターの内側から見た旧来の居酒屋文化
内容 本研究では、日本の居酒屋文化と経営戦略に焦点を当て、居酒屋が「第三の場」として果たす役割を明らかにした。江戸時代から続くとされる居酒屋は、サラリーマンや常連客にとって、仕事のストレス解消やコミュニケーションの場として重要な存在である。特に、常連客との関係を深めるために、店側は臨機応変な接客を行い、アルバイトが常連客の好みを覚えることなどを通じて「家族的な雰囲気」を作り出している。また、経営面では、常連客との関係を大切にしつつも、経済的な視点で顧客を取捨選択している。こうした取り組みにより、居酒屋は単なる飲みの場にとどまらず、客と店主との信頼関係を基にした独自のコミュニケーションの場として成り立っていることが分かった。しかし現在、チェーン店やネオ居酒屋の登場、コロナ禍の影響により、従来の居酒屋文化は薄れつつあり、居酒屋の社会的役割も変化しつつある。それでも、居酒屋が果たしてきた文化的意義は今後も社会において重要であり、その存在価値は次世代に引き継がれるべきであるといえる。
講評 チェーン店や大手居酒屋などでは見られない、個人営業で店を構える居酒屋の個性豊かな経営者たちがいかに店を切り盛りするのか、その舞台裏に光を当てる論考である。個性的な「ママ」に鍛えられながら従業員として経験を積んできた筆者ならではの、客や料理をめぐるユニークなコミュニケーションが記述される。特に、匿名の大衆に向けたサービスではなく顔の見える顧客に向けた臨機応変な関わり(そこには客の支払い能力に対するシビアな勘定も含む)が鋭く描き出され、店舗を切り盛りするという営みの分厚い経験の一端が照らし出される。先行研究に対する貢献が明示的ではないものの、ひとつの居酒屋文化をめぐる、生き生きした人間模様を描き出している。
キーワード1 常連客
キーワード2 接客
キーワード3 ママさん
キーワード4 居酒屋
キーワード5