学科 | 教育文化学科 | ゼミ教員名 | 奥井 遼 | 年度 | 2024年度 |
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タイトル | 時間的・空間的広がりからみた絵本の読み聞かせ体験 |
内容 | 本稿の目的は、小学校における絵本の読み聞かせボランティアとしての実践ならび参与観察を通して、絵本の読み聞かせ体験の豊かさを明らかにすることである。具体的には、読み聞かせ体験は、単に眼前で進行する絵本世界に没入することを指すのみならず、読み手や聞き手の過去を包含するという時間的広がりや、読み手と聞き手、その他様々な要素がそれぞれ相互に作用するという空間的広がりをもっていることを示す。その際、筆者も含めた複数の読み手のスタイルを分析することで、読み手の視線、手振り、声色といった要素には読み手なりの働きかけの形としてその多彩さが表れており、これは聞き手の反応、日常経験といった要素と作用し合うことが理解される。このような「自分らしさ」が染み通った、特有の要素が掛け合わさり紡がれる読み聞かせ体験は、人と人との交わりを実感できる血が通った時間であり、読み手と聞き手双方にとってかけがえのないものとなる。本稿は、読み聞かせが教育的・情緒的効果のための手段としてありうることを示すのではなく、むしろそれ以前に、その行為自体に価値が内在しているということを明らかにするものである。 |
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講評 | 筆者も絵本の読み聞かせボランティアとして1年以上活動を続けながら、読み聞かせの中で得られる質的な経験を記述しようとした論考である。自身の子どものころに好きだったという絵本の読み聞かせの記憶を手がかりとして、ボランティア中の小学校での子どもたちとの関わりや、ベテランボランティアたちの読み聞かせ場面の観察を題材とすることで、読み手の工夫が聞き手との間で(または聞き手同士の間で)相互作用を引き起こし、絵本を味わうことの体験の深まりを描き出した。筆者の独創的な解釈は、いわゆる絵本の世界に没入させるような朗々とした語りのみを評価するのではなく、読み手の人柄が滲み出るような(自分らしくあるような)読み方こそ、子どもたちの絵本体験を豊かに彩ることを論証した点にある。絵本の読み聞かせに対する一つの説得的な解釈を打ち出した論考といえよう。 |
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キーワード1 | 読み聞かせ |
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キーワード2 | 内在価値 |
キーワード3 | 自己表現 |
キーワード4 | 相互作用 |
キーワード5 | 体験 |