学科 | メディア学科 | ゼミ教員名 | 水出 幸輝 | 年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|---|---|
タイトル | 『日本沈没』のリメイクに見る災害認識の変容 |
内容 | 本稿では、小松左京の小説『日本沈没』を題材にリメイク作品の比較分析を行った。1973年と2006年に公開された映画、2021年放送のテレビドラマを対象とし、それぞれの作品の変化とその背景を検討することで、災害認識の変容を明らかにしている。 例えば、1973年版映画は特撮によるダイナミックな災害シーンが描かれるのに対して、2006年版映画は人間関係に重きを置いた内容に変化している。また、2021年版テレビドラマは物語が大きく変更されており、過去に同じ「日曜劇場」枠で放送された「半沢直樹」を彷彿とさせる作品となっている。こうした作品ごとの特徴をより細かく検討することによって、「作品の主題」、「主人公の変化」、「災害発生時の人びとの描写」、「科学的に説明する描写」、「復興の描写」という5つの相違点を導き出した。そしてその要因は、「時代背景」と「制作スタッフからの影響」の2つに収斂することが明らかになった。 本稿では『日本沈没』を扱うことで、制作段階で作品が受ける影響を踏まえた議論を展開した。これは、既存の研究が取り上げてこなかった論点である。 |
---|
講評 | 本研究は、小松左京の小説『日本沈没』を対象とし、リメイク作品の分析に取り組んだものである。1973年版と2006年版の映画、および、2021年に放送されたテレビドラマを分析対象としている。日本社会の災害認識の変遷を検討した先行研究をうまく下敷きにしながら議論を展開することができた。 出色なのは作品の作り手に注目し、人びとの配置が作品に与えた影響を検討しようとした点である。このことで、災害経験に限定することなく作品を規定する要因を議論することができた。リメイクを題材とした場合、表象の変化を追うことに終始しがちだが、変化の背景と構造を丁寧に検討することができた。災害情報論を中心とする災害とメディア研究との対応としても価値のある「卒業論文」といえる。 |
---|
キーワード1 | 災害認識 |
---|---|
キーワード2 | 『日本沈没』 |
キーワード3 | リメイク |
キーワード4 | 東日本大震災 |
キーワード5 | 阪神・淡路大震災 |