卒業論文詳細

学科メディア学科 ゼミ教員名水出 幸輝 年度2024年度
タイトル『リング』と『貞子3D』の恐怖表現の変化 映画のデジタル化とプロモーション
内容  この論文は、映画『リング』シリーズと『貞子3D』シリーズのストーリー構造の変化をシーン分析を通じて示し、その原因を明らかにすることを目的としている。映画評論家の発言とシーン分析により、『リング』シリーズでは、サスペンスホラーとして「貞子」の背景情報が物語内で詳細に描かれていたのに対し、『貞子3D』シリーズでは「貞子」に関する情報提供が抑えられ、視覚的かつ直接的な恐怖表現が増加していることが分かった。この変化は、映画のデジタル化とプロモーション手法の進化に関連している。
 デジタル化の進展により、CGやVFXが活用されるようになり、現実では再現が困難な映像表現が可能となった。これにより、『貞子3D』シリーズでは、あらゆる画面から「貞子」が飛び出すなどの視覚的恐怖が強調されている。一方、プロモーション手法も、『リング』シリーズではテーマパークとのコラボレーションが中心で観客が能動的に「貞子」の世界に触れる形式だったのに対し、『貞子3D』シリーズでは「貞子」が単体で現実世界に進出し、始球式やSNSを活用したプロモーションが展開された。これにより、「貞子」というキャラクターは認知を高め、作品内での詳細な説明が不要になったと考えられる。
講評  本稿は、日本におけるホラー作品のメディア展開を、『リング』シリーズと『貞子3D』シリーズを対象に検討したものである。作品の内容を丁寧に分析することによって、オーディエンスに与える「恐怖」の表現方法が変化していることを具体的に明らかにした。
 資料の扱いには課題があるものの、メディアの技術変化によって、作品の表現だけでなく、プロモーションにも変化が生じていたことに注目し、議論を拡げたことは評価される。このことで、プロモーションが与える作品内容への影響を示唆することが可能になったからだ。3D技術によって恐怖表現が変化することは「あたりまえ」のことだが、この「あたりまえ」を具体的かつ丁寧に確認し、問題関心に沿って議論を拡張できたことは評価される。
キーワード1 映画
キーワード2 ホラー
キーワード3 3D
キーワード4 デジタル化
キーワード5 プロモーション