卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名轡田 竜蔵 年度2024年度
タイトル犬社会学―主観的家族研究の視点から―
内容 本稿では、「現代の犬の飼い主が、犬に求める役割・機能とは何なのか」「現代の飼い主が犬との関係性において、権力の勾配のない対等な「純粋な関係性」を築くことができているのか」という問いをたて、犬を擬人化し、人間の家族のように扱う「機能的代替型」、犬を犬として家族の一員とみなす「親密圏内型」、犬のことを家族とは捉えていない対象者を家畜型として、3種類に類型される犬の飼育者14名にインタビュー調査を行った。
結果、現代の犬の飼い主の中でも、犬を犬であるとみなしていた親密圏内型や家畜型は「愛玩対象としての癒し」や「子どもの情操教育」といった機能的な役割を求めていた一方で、犬を人間と同等以上の存在とみなしていた「機能的代替物型」は犬に機能的な役割を求めず、「純粋な関係性」を築くことができていた。そして、犬が猫と比較して「純粋な関係性」を築くことが難しい背景に、生物的な特性のみでなく、これまでの犬と猫の飼育に対する歴史的な変遷が関係しているのではないかと結論づけた。
講評 家族定義を社会学のなかで問い直す議論の中で、ペットが論じられ始めたのは1990年前後であり、近年では、猫について論じる社会学的業績も活性化しているが、その一方で、犬を飼う人への社会調査に基づく考察は乏しく、そこに挑んだことを評価したい。調査の初動は遅かったが、問いが明確で、質問内容が事前に練られていたため、2か月間で14人もの犬の飼い主にインタビューできた。その結果、犬の位置づけを3つのタイプ(「家畜型」が犬特有のタイプ)に分けてその飼い主の意味づけの違いを明らかにし、また、子どものいる家庭で犬を飼うことの意味など、犬を社会学の問題として考える上で、必要な論点に目配りができている。犬を飼う人口は減少傾向にあると言われるが、その背景を社会規範や家族規範の変化との関係のなかでどう説明できるだろうか。時間をかけて一つの家族における犬との関わりの変化を描くなど、様々な方法で発展させる可能性のある論文である。
キーワード1
キーワード2 ペット
キーワード3 コンパニオンアニマル
キーワード4 家族社会学
キーワード5