卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名轡田 竜蔵 年度2024年度
タイトルイラストレーターの社会学―進路・キャリア選択を中心に―
内容 現在イラストレーターの参入障壁は低く、美術系の学校・職業選択をしたことがない者でも、SNSでの活動などを通してイラストレーターになることができる。そのため本業、副業・兼業ともに多様なキャリアが存在しているが、その実態やキャリア志向は明確にはされていない。本論文では「現代のイラストレーターのキャリア選択背景、およびキャリアの実態・志向とは」という問いを立て、美術系キャリアを歩んできた者、非クリエイター職から転向した者、本業で非クリエイター職をしながら副業イラストレーターをしている者の3タイプ計9人に調査を行った。結論として、友人や家族からの助言や、仕事への不満、SNS経由での仕事の受注等の、主に社会人以降の出来事がキャリアをはじめるうえでの明確なきっかけになっていた。活動では「誰かの役に立ちたい」「一部の人からの評価を得たい」等の欲求が大きい。全員職業の不安定さを課題に感じており、将来目標については現状維持やステップアップのほかに、漫画家やアーティストなどの隣接領域に進む道も検討されていた。安定的なキャリアを築くため、複数のキャリアや収入源を持つことが望ましいと結論付けた。
講評 国家資格を持たない専門職としてのイラストレーターの実態に注目した、情報量の多い論文である。9人へのインタビュー等から収集したデータを、ボトムアップ型の手法で分析した過程を丁寧に記述している。キャリアパス図等の表現が見事である。美術系の学校を経て、会社勤務等を経たうえで、専業フリーランスになることがこのキャリアのメインルートだが、その道筋を行ける者は限られる。むしろウェブ社会の発展によって、他のルートからの参入がしやすくなり、働き方の多様性も広がった点が明らかにされる。また、その活動上の欲求の諸類型を尋ねる工夫された調査項目を設定し、当初の仮説と異なり、「トップスター」としての卓越化を志向する者は稀だという発見をしており、他のクリエイター界との比較のうえで興味深い。今後、IT技術の発展にともなうデジタルクリエイターの働き方の変化とその課題について考察を深めるうえで資料的価値が高く、発展性を感じる論文である。
キーワード1 イラストレーター
キーワード2 クリエイター
キーワード3 キャリア
キーワード4 フリーランス
キーワード5