学科 | 社会学科 | ゼミ教員名 | 轡田 竜蔵 | 年度 | 2024年度 |
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タイトル | 名古屋人の自虐思考――安定層の若者の地元愛着と居住志向から―― |
内容 | 名古屋人は名古屋を自虐することがしばしばある。本稿ではその要因や名古屋観を調査した。大卒安定層に着目する中で、彼ら特有のキャリア志向や居住志向が浮かび上がり、それを名古屋安定層のローカル・トラックと定義して分析を行った。調査では愛知県内のある県立高校の文系卒業生約120名にアンケート用紙を配布し、そのうち11名にインタビュー調査を実施し、名古屋で活躍するアクター2名にも追加調査を実施した。その結果、地域移動者数の少ない愛知県にしては珍しく県外進学率や県外就職率が高いこと、名古屋の「ちょうどよさ」には満足していること、県外に流出した場合でも家族形成のタイミングでUターンする可能性があることなどが指摘された。また、名古屋自虐は「名古屋人の名古屋に対する造詣の低さ」と「住みやすさへの満足度の裏返し」によるものだと分かった。名古屋には住むには十分の環境が揃っている。Uターンする可能性のある者を確実にUターンさせるためには無理に名古屋の現状を変更しようとするよりも、現在の住みよさを維持しつつ、少しだけ新しい風を吹かせるくらいが「ちょうど良い」のではないだろうか。 |
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講評 | 本論文は、名古屋の人のシビックプライドの低さの背景を探った論文である。結論から言えば、そのことは社会的属性、例えば地域移動の選択とは関係が無かった。筆者は、県外流出率が高い市内の進学校M高校を卒業した大学4年生に質問紙調査およびインタビューをし、その全員が何らかの形で「自虐語り」をしたが、その一方で、実は全員が名古屋の住みやすさを誇っていた。筆者は「名古屋には何もない」という語りを名古屋の特殊性とみなすが、それは利便性の高い他の地方の拠点都市、あるいはジェネリック・シティ(無印都市)を地元とする者に典型的な語りと何が違うのだろうか。筆者はまちづくりのアクターにも取材し、名古屋に必要なのは新たな観光地ではなく、「地域を見つめ直すきっかけとなる新たな風を吹かせる活動」と考える。その一方、調査対象者の自虐語りは同質的だったと結論するが、生活経験を積み、活動にも関与するなかで、その語り方は変化しないのだろうか。 |
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キーワード1 | 名古屋 |
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キーワード2 | ローカル・トラック |
キーワード3 | 自虐 |
キーワード4 | シビックプライド |
キーワード5 |