卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名轡田 竜蔵 年度2024年度
タイトル観光地におけるローカルメディアの可能性ー宮島を事例にしてー
内容 本論文では、観光地を住み続けられる地域にするための手段として広義の編集の可能性を考察した。先行研究から、観光地の課題解決には、地域内外のコミュニケーションが必要であると考えた。そこで、双方のコミュニケーションを促す手段としてのメディアの可能性を探るため、ローカルメディアの事例研究を行った。地域編集を行うローカルメディアが人と地域を「つなぐ」ことができるのではないかと考えた。さらに、観光地でメディア制作を行う方にインタビュー調査を実施し、地域編集を行うメディアのコンテンツを明らかにした。それは、新たな視点を届ける「第3のメディア」の編集を行い、さらにリアルな場の編集をすることである。「第3のメディア」は人と地域を「つなぎ」、リアルな場は人と人をつなぐのである。
最後に、宮島を「編集する」ためのメディア制作の実践を通じて、メディアの運営主体の宮島に対する考えや、地域内外の人々との関係性の変化を考察した。「第3者」の視点を持ったメディアの運営主体が、さらにツアーなどの目的を持ったリアルな場所を編集することで、地域編集者として住み続けられる宮島の実現に大きな役割を果たすのではないだろうか。
講評 観光地におけるローカルメディアに関する洞察に基づく、10万字近い熱量の高い卒論である。筆者は、1980年代以降の人と地域、人と人を結びつけるローカルメディアの広がりや役割を類型的に分析したうえで、その制作に関わる複数の当事者への取材を行っている。その結果、コンテンツ制作にとどまるメディアの限界を指摘し、一般住民でも観光客でもない「地域編集者」としての立場を意識し、リアルな場づくりやプロジェクトにも取り組むことが効果的だと結論した。本論文が挑戦的なのは、その後に実践編が続く点である。宮島が地元である筆者は、「もし宮島に厳島神社が無かったら」と銘打ちローカルメディアを自主制作し、商業主義的な「観光のまなざし」(ジョン・アーリ)に収まらない、新しい視点と関係性を生み出すことを目指しつつ、その活動のなかでの取材や思考の過程を記述した。ここで意識化された実践的関心が、筆者の今後の活動にどう生かされるのかを見守りたい
キーワード1 ローカルメディア
キーワード2 地域編集
キーワード3 リアルな場
キーワード4
キーワード5