卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名轡田 竜蔵 年度2024年度
タイトルコミュニティデザインにおけるボードゲームの活用可能性――ボードゲームの実践と事例から――
内容 人口減少社会の日本においては、私たち一人ひとりが主体的に、街づくりに参加する姿勢が求められる。そうした現状では、「コミュニティデザイン」という手法の重要性が指摘されている。本論では、娯楽としてのみならず「ゲーミフィケーション」の文脈の中で社会的意義を持ち始めているボードゲームを取りあげ、「コミュニティデザイン」の手法における活用可能性について論じた。具体的には、若者17名を対象にボードゲームを用いたワークショップを実施したほか、「ケア」「娯楽」「街づくり」「教育」といった多種多様な領域でボードゲームを活用する6つのフィールドから7名の方へ、現状の取り組みやボードゲームの応用可能性などについてインタビュー調査を実施した。これらの調査を通じて、ボードゲームというコンテンツには、プレーヤー同士が利害関係を共有し、「自己開示」をすることによって「連帯」の意識が芽生えること、さらに「社会属性」を無効化することができるという2点の特徴が分かった。こうした特徴を有するボードゲームを、場を運営するキーパーソン的な存在を要として「コミュニティデザイン」の手法へと代入することで、人間関係のみならず、多種多様な領域における「つながり」の創出に寄与する可能性について指摘した。
講評 本論文は、ボードゲームという娯楽活動が公共の場で行われるようになり、社会参加を広げていく実践が広がっているという現象に注目し、これを近年のまちづくりの手法としてのコミュニティデザインの実例として考察したものである。多様なボードゲームの実践の場への取材だけでなく、自身でワークショップを主催してその観察に基づく記述をするというユニークな方法が試みられている。小学生の頃よりボードゲームに関わってきたという筆者の貴重な当事者性が生かされ、趣味と社会参加とをつながる道筋について、説得力の高い論文である。理論的な整理も巧みであり、ボードゲームの場とつながる人や物や制度とのつながりの記述をするさいに、アクターネットワーク理論との接続可能性が指摘されているのが興味深い。もう少し時間をかけて、アクターの観察や取材をすれば、ボードゲームの場を起点とした「社会的なるもの」が広がる過程と課題がより多面的に描けそうである。
キーワード1 コミュニティデザイン
キーワード2 ボードゲーム
キーワード3 趣味縁と社会参加
キーワード4
キーワード5