卒業論文詳細

学科メディア学科 ゼミ教員名竹内 幸絵 年度2024年度
タイトル映画『バービー』に見るフェミニズム表現とメディアの政治性
内容  映画『バービー』をフェミニズムの視点から分析した本論文では、映画評価の分極化とメディアの政治性について考察した。フェミニズム映画は、伝統的な物語映画の男性中心的視線に基づく限界から脱皮するために、女性の視点を取り入れる試みを続けてきた。2023年に公開された映画『バービー』は、従来のフェミニズム映画の傾向を継承しながらも、ブラックコメディやラディカルな表現を用い、観客に直接的で挑戦的なメッセージを伝えている。本作の政治性やフェミニズム表現は、地域ごとのフェミニズム受容や文化的価値観に影響を受け、西欧とアジアにおける評価の分極化を引き起こしたことがわかった。また、制作者の意図的な政治性が、フェミニズム映画の表現の幅を広げるとともに、新たな可能性を提示したと考えられる。今後、ポストフェミニズム時代におけるフェミニズム映画の価値やメディアの政治性について、さらに活発な議論が展開されることが期待される。
講評 あふれる意欲でもって、人形のバービーの実写化映画バービー(2023年)を多角的に分析した論文である。強烈なフェミニズム映画がなぜこの時期に創られたのか。なぜ日本・韓国で興業が成功しなかったのか。評価の両極化には文化的背景以外にも映画そのものに理由があるのではないか。筆者は多くの疑問と深い興味を持ちつつぶれずに走り切った。フェミニズム映画理論(マルヴィ 1975)と近年の映画にかかる先行研究を読み込み、女性主導的な物語、女性同士の連帯、異性との恋愛における主体性、を焦点化し映像を分析し議論した。一つの結論は、ラディカルなフェミニズム表現(ミラーリング手法や男性権威のブラックコメディ化を含む)の露骨さや言語的直接性が、フェミニズム理解の低いアジアで理解されなかった、である。本論にはこれ以外にも複数の視点が提示されており、複雑で深い文化性を持つ映画を題材として時代と社会を鋭く照射している。
キーワード1 フェミニズム
キーワード2 フェミニズム映画
キーワード3 バービー
キーワード4 ポリティカル・コレクトネス
キーワード5 ジェンダー