学科 | 教育文化学科 | ゼミ教員名 | 中川 吉晴 | 年度 | 2024年度 |
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タイトル | チェンジラボラトリーの方法論に関する考察 ー医療組織における実践例に焦点を当ててー |
内容 | 本研究は、文化歴史的活動理論の具体的な介入の方法であるチェンジラボラトリーの意義と課題に関する論考である。21世紀初期、フィンランドのヘルシンキにおいて、慢性的な疾患を抱えた患者の医療情報を担当医師が統合的に把握しきれていないという事態を解決するために委託を受けたエンゲストローム(Y.Engeström)らの研究チームは、医療現場の実践者たちとともに新しい実践のモデルを生み出したものの、結果的にこのモデルは、その医療現場へ普及することはなかった。本論文では、この新しいモデルが普及しなかった原因を追究することを試みた。その際、⑴参加者が持つ専門性の「境界」をいかに画定するかという問題、⑵具体的にどのような「イノベーションの機能」を形成していくかという問題、⑶医療実践に関わるアクターから向けられる「期待」にいかに応えていくかという問題、が見出された。こうした3つの観点に着目することで、チェンジラボラトリーがその「マネジメント」の方法に根本的なパラドックスを抱えていることを明らかにした。 |
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講評 | 本論文は、学習科学のデザイン研究でとりあげられるチェンジ・ラボラトリーという介入方法について、詳細な文献研究、当事者へのインタヴューをとおして、その可能性と限界を明らかにしたものであり、研究論文としてすぐれた内容になっている。また、本論文は留学先であったヘルシンキにおける研究活動の成果でもある。本考察に際して、学習活動において見落とされがちなマネジメントの側面に着目して、チェンジ・ラボラトリーの事例を分析し、イノベーションをもたらすデザイン研究に新たな視座を導入していることが評価できる。 |
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キーワード1 | イノベーション |
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キーワード2 | チェンジラボラトリー |
キーワード3 | 学習 |
キーワード4 | エンゲストローム |
キーワード5 | デザイン |