卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名上田 眞士 年度2024年度
タイトル生成AIと営業職の可能性 ——競合する関係でなく補完する関係性——
内容  本論文では、営業職と生成AIの関係性について「競合」ではなく「補完し合うもの」と捉える視点を提示する。コロナ禍を契機に商談や会議のオンライン化が進み、生成AIが資料作成やデータ分析を支援する場面が増えたことで、IT活用の有無が営業個人および企業の競争力を左右する状況が生まれている。しかし、営業職は従来の商文化から3Kと呼ばれる、勘・経験・根性に委ねるステレオタイプの営業手法が根強く残っており、属人性に頼りがちな職種とも考えられ、その固定概念からも営業と生成AIの関係性は密でないとされ、AIが本格的に実装されず、米国との生産性に差が生まれてしまっている。しかし、営業担当者が持つ対話力や信頼構築の能力に加え、生成AIのデータ処理、分析力を組み合わせることで、営業活動の精度と効率が向上し、顧客満足度の向上が期待されるため、導入しない理由がない。実際は生成AIの話題性が高まっている中で日本において、営業組織や営業現場での生成AIの活用事例や成果事例の情報はまだ少ないのが現状としてあり、根本的な考え方から脱却せずには営業と生成AIが補完関係になることはないと筆者は考え、協働による営業活動の進化が企業競争力の向上に寄与することを示す。
講評  皆さんの卒論のテーマを順不同で列挙すると、「若年非正規労働者が声を上げるには」「副業のメリットと現状の制度における課題」「男性育休推進をめざして」「CSRという概念の理解」「就職活動と雇用形態の関係性」「労働組合と若者の壁」「過小評価されるエッセンシャル・ワーカーの実態」「長時間労働の是正に向けて」「生成AIと営業職の可能性」「キャリア形成のためにすべきことを、コンサルと労働者の両面から考える」というのが、その一覧です。たしかに個々の論文を取り上げれば、その出来映えには精粗や優劣もあったように思います。けれども、テーマ発表から要綱発表、中間報告へと続いた一連の進捗管理にゼミ生皆が真面目に取り組んでくれた。その成果が現れているのだと積極的に受け止めています。そこでここでは、研究活動をめぐって私が大事だと考える要点を指摘して、それを皆さんに向けた贈る言葉、卒論作業を締め括る講評としたいと思います。
 それは「わかりたい」という気持ち、「理解する」という作業を一番大切にして欲しいということです。そして、そのためには、一つには労働問題や社会的課題を取り上げるなら、問題の「現場」へと肉薄していく努力を大事にしてもらいたいということです。それは研究活動に限らず、日常の仕事の過程にもあてはまる、現場主義の基本姿勢だと思います。またいま一つには、貪欲に読書することが必要だということです。曖昧模糊としていた問題意識も鮮明にすることになりますし、課題の掘り下げも深まることになります。そして、その過程を通じて、皆さんの知的な体力を涵養することにも繋がります。やはり同じく、研究活動に限らず日常の仕事の過程にも通じる、基本的な心構えだと思います。あらかじめ役立つこと、目的地を定めた活動も大事です。けれども、私は安易に処方箋を書く前に、先ずは「理解する」という営みを、皆さんには今後も大切にしてほしいと考えています。
キーワード1 営業職
キーワード2 生成AI
キーワード3 働き方の変容
キーワード4 AI 格差
キーワード5