卒業論文詳細

学科産業関係学科 ゼミ教員名上田 眞士 年度2024年度
タイトル若年非正規労働者が声をあげるためには
内容  本論文では「若年非正規労働者」を主題に掲げ、彼らが所得面やキャリア構築において、また「拠り所のなさ」という点で困難を抱える存在であると理解した上で、これらに対して声をあげていく方途について検討した。こうした困難の背景には、企業間競争激化や規制緩和による雇用の流動化、セーフティネットの未成熟といった社会システム上の問題が関係している。にもかかわらず、そうした背景が注目されるというより、むしろ不安定雇用や低賃金といったリスクに対応するのは個人の責任であると、困難に追い込まれた当事者に自責を強いる「自己責任論」が拡大してきたことが重大な問題であると指摘した。結論としては、若年非正規労働者が構造上・制度上の問題の「従」としてではなく、これらに異議を唱え主体的に自己責任論を克服していく方途として、コミュニティ・ユニオンを活用するという方法を提唱した。働く上でのトラブルに遭遇した際に助けとなるだけでなく、コミュニティ・ユニオンを一つの媒介とすることでそれぞれの不安や不遇を共有し、労働者同士で連帯して個々人のものと思い込まされた問題を社会により開かれたものとして提起していくことができると考える。
講評  皆さんの卒論のテーマを順不同で列挙すると、「若年非正規労働者が声を上げるには」「副業のメリットと現状の制度における課題」「男性育休推進をめざして」「CSRという概念の理解」「就職活動と雇用形態の関係性」「労働組合と若者の壁」「過小評価されるエッセンシャル・ワーカーの実態」「長時間労働の是正に向けて」「生成AIと営業職の可能性」「キャリア形成のためにすべきことを、コンサルと労働者の両面から考える」というのが、その一覧です。たしかに個々の論文を取り上げれば、その出来映えには精粗や優劣もあったように思います。けれども、テーマ発表から要綱発表、中間報告へと続いた一連の進捗管理にゼミ生皆が真面目に取り組んでくれた。その成果が現れているのだと積極的に受け止めています。そこでここでは、研究活動をめぐって私が大事だと考える要点を指摘して、それを皆さんに向けた贈る言葉、卒論作業を締め括る講評としたいと思います。
 それは「わかりたい」という気持ち、「理解する」という作業を一番大切にして欲しいということです。そして、そのためには、一つには労働問題や社会的課題を取り上げるなら、問題の「現場」へと肉薄していく努力を大事にしてもらいたいということです。それは研究活動に限らず、日常の仕事の過程にもあてはまる、現場主義の基本姿勢だと思います。またいま一つには、貪欲に読書することが必要だということです。曖昧模糊としていた問題意識も鮮明にすることになりますし、課題の掘り下げも深まることになります。そして、その過程を通じて、皆さんの知的な体力を涵養することにも繋がります。やはり同じく、研究活動に限らず日常の仕事の過程にも通じる、基本的な心構えだと思います。あらかじめ役立つこと、目的地を定めた活動も大事です。けれども、私は安易に処方箋を書く前に、先ずは「理解する」という営みを、皆さんには今後も大切にしてほしいと考えています。
キーワード1 若者雇用
キーワード2 非正規労働者
キーワード3 雇用の流動化
キーワード4 自己責任論
キーワード5 コミュニティ・ユニオン