学科 | 社会福祉学科 | ゼミ教員名 | 木原 活信 | 年度 | 2024年度 |
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タイトル | 臨床におけるがん患者へのナラティヴアプローチ― MSWの関わりによる自己承認― |
内容 | 本論文は、ナラティヴアプローチとケアに関する先行研究を整理することで、医療現場におけるナラティヴアプローチの意義を確認し、作家の西加奈子が自身のがん治療について描いたノンフィクション『くもをさがす』を分析して、がん患者のナラティヴの変容のプロセスを明らかにした。がん患者の治療に対する自己決定には、ナラティヴアプローチを通した患者の自己承認が大きく影響している。患者が自身の物語を紡ぎ出す際に、実在論的ケアを提供する医療と、構成論的ケアをもたらすナラティヴの補完関係が重要であり、医療機関において、MSWはその物語の共著者になりうることを示した。『くもをさがす』の分析をすることで、実際の物語の中にナラティヴが現実認識に影響していることを浮かび上がらせ、語り手と読み手のケアの相互作用として解釈した。最後にナラティヴの成立について再考し、解決を目的としないナラティヴもケアになると分かった。 |
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講評 | 本論文は、作家の西加奈子が自身のがん治療について描いた小説『くもをさがす』を取り上げ、それを分析することで、実際の物語の中にナラティヴが現実認識に影響していることを浮かび上がらせ、語り手と読み手のケアの相互作用として解釈した論稿である。結果的に大変ユニークなものであり、個性的な論稿となっている。本論の中で「ナラティヴの成立」について再考し、問題の解決を直接的に目的としないナラティヴというものもケアの一部になると導出した点も評価できる。ナラティヴ・アプローチとケアに関する先行研究をよく読み込み、整理している点も評価できる。医療面での実践的な応用には十分に議論されていない課題があるが、『くもをさがす』をベースに独創的に分析し深く思考できた。文章表現もしっかりとしたものであり、非常に高い評価に値する。 |
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キーワード1 | ナラティヴアプローチ |
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キーワード2 | ケア |
キーワード3 | がん |
キーワード4 | 臨床 |
キーワード5 |