卒業論文詳細

学科社会福祉学科 ゼミ教員名木原 活信 年度2024年度
タイトル児童養護施設における子どもアドボカシーの意義―虐待経験者の「声」とアドボケイトへのインタビュー調査を通して―
内容 本論文の目的は、児童養護施設で暮らす子どもに焦点を当て、子どもアドボカシーの意義を①理念②当事者③実践の視点から描出することである。子どもの権利条約に日本はようやく1994年に批准し、国内法の整備が2016年に行われたが、子どもアドボカシー活動が制度として実現したのは、2024年度の改正児童福祉法施行を待つことになった。本論では、子どもアドボカシーの理念と制度導入の経緯を概観した上で、当事者によるドキュメンタリーの若者の声から、精神科医の宮地尚子による「環状島モデル」を援用して、子どもアドボカシーのニーズを汲み取った。さらに、アドボケイトへのインタヴュー調査を通じて訪問アドボカシーの現状と課題を示した。本論全体の分析を通して、逆境体験のある子どもが声を上げることの困難性と複雑性を再発見し、子どもの声を拠り所とし、その立場に徹底的に立つアドボケイトの支援者としての役割の特殊性を明らかにした。
講評 本論文は、児童養護施設で暮らす子どもに焦点を当て、子どもアドボカシーの意義を、①理念②当事者③実践の視点から精緻に議論し、自分の考えをしっかりと言語化してまとめられた秀作である。着想に自身のアルバイト体験が生かされた点も論文全体を生き生きとしたものとしている。論点は、児童養護施設で暮らす子どもに焦点を当て、その子どもアドボカシーの意義を徹底的に議論した内容である。そこでの議論として、子どもアドボカシーの理念と制度導入の経緯について整理できた点は高く評価できる。特に評価できるのは、当事者によるドキュメンタリーの若者の「声」から、リアリティを引き出している点である。「逆境体験のある子どもが声を上げることの複雑性と困難性を再発見し、子どもの声を拠り所とし、その立場に徹底的に立つアドボケイトの支援者としての役割の特殊性」という結論は、今後の実践の中で試され、最終的な結論が出てくるであろう。今後は、実践でその能力をさらに深めていってほしい。その際、先駆的実践の成果を称賛するだけでなく、批判的考察をし、自分の実践課題を見出していってほしい。
キーワード1 子どもアドボカシー
キーワード2 子どもの声
キーワード3 児童養護施設
キーワード4 意見表明権
キーワード5 子どもの権利