学科 | 社会学科 | ゼミ教員名 | 森 千香子・木戸 衛一 | 年度 | 2024年度 |
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タイトル | ケア職における男性性について ―男性保育士の生存戦略に注目して― |
内容 | ケアは伝統的に女性の役割と考えられてきた。 その背景にはケアが女性性・女性らしさと結びつけられ、男性には適さない行為としてみなされてきたことがある。そもそも男性性や女性性といったものは一義的に定義することはできず、その意味合いは時代や状況によって変化する。そこで本研究が注目したのは男性ケア労働者の男性性である。女性が多数を占めるケア職において男性が従来の男性性研究の中で語られてきたような覇権的な男性性を発揮するとは考えにくい。それでは、男性ケア労働者がケアの現場で見せる男性性とはどのようなものであるか。これが本研究の問いである。筆者による男性保育士へのインタビュー調査により、男性ケア労働者がケアの現場で行うことは女性性との同化ではなく、むしろ男性性の強調であることが分かった。自身が男性であることを活かしたケアを行うことで自身の職場における存在意義を見出しているのだ。そして彼らが男性的であると考えるケアはヘゲモニックな男性性とは異なるものであった。 |
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講評 | 本稿は、ケア労働に対する一般的な家父長主義的偏見への違和感をベースとし、男性ケア労働者に着目して、その労働現場において逆説的なことに彼らが男性性を発揮していることを明らかにした意欲的な論文である。先行研究として、女性学に遅れて始まった男性学に関する整理・評価もおおむね妥当である。また、具体的考察の素材として行われた3人の男性保育士へのインタビューを通じて、女性が多数を占める職場に適応していくことへの不安やその実態が簡明に描かれている。 本稿の調査・考察を通じ、「ジェンダーフリー」の実現の困難さを改めて認識せざるを得ない。ただし、男性保育士に焦点を当てた本論文の結論が、果たして男性ケア労働一般に妥当するのかどうかについては、なお検討の余地があるだろう。ともあれ、卒論でジェンダー問題に取り組んだ筆者が、将来の生活においてその知見をどのように生かすのか興味深い。 |
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キーワード1 | 男性性 |
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キーワード2 | ケア |
キーワード3 | 男性保育士 |
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