学科 | 社会学科 | ゼミ教員名 | 森 千香子・木戸 衛一 | 年度 | 2024年度 |
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タイトル | 地域社会における子ども食堂の役割と課題 ―奈良シカ食堂への参与観察をとおして― |
内容 | 本稿では、子ども食堂の多面的な役割を明らかにすることを目的に、奈良県の「シカ食堂」において参与観察と半構造化インタビュー調査を実施した。子ども食堂は、子どもの貧困や家族形態の変化、地域コミュニティの希薄化といった現代日本の社会問題に対応する取り組みとして、全国的に広がりを見せている。一方で、世間一般では子ども食堂が持つ多様な役割が十分に認識されておらず、「貧困家庭向けの支援」という限定されたイメージが先行し、スティグマが課題として浮上している。調査の結果、シカ食堂は単なる食事提供の場にとどまらず、子どもが安心して過ごせる居場所や、地域住民との世代間交流を促進する「地域コミュニティ再生の場」として機能していることが明らかとなった。結論では、子ども食堂が持続可能な形で地域に根付き、発展するための方策として、政策的支援や地域住民の理解促進の必要性を提言した。 |
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講評 | 本稿は、筆者自身がボランティア活動をしている「シカ食堂」(奈良)での参与観察とそれに携わる方々へのインタビューを通して、子ども食堂の現状と課題についてまとめたものである。自己の体験に裏付けられているだけに、子ども食堂が貧困家庭支援のみならず地域コミュニティ再生の場として機能しているという論旨は明快であり、分析も説得的である。 ただ、子どもの貧困の問題は厳然として存在するのであり、「イメージ」を口実に子ども食堂への無理解を公然と開陳する社会の側への原理的批判やコンフリクト克服の方途に関わる叙述をもっと展開してよかったのではないかと思われる。また、貧困という文脈であれ社会的孤立という文脈であれ、本来であれば子ども食堂的な民間の取り組みを必要としない社会こそが望ましいはずである。その意味で、ここまで社会の荒廃をもたらした新自由主義に代わる新たな社会構想への関心を今後深めていってほしい。 |
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キーワード1 | 子ども食堂 |
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キーワード2 | 地域コミュニティ |
キーワード3 | 居場所 |
キーワード4 | |
キーワード5 |