学科 | 社会学科 | ゼミ教員名 | 森 千香子・木戸 衛一 | 年度 | 2024年度 |
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タイトル | 日本における20代性的マイノリティ女性の“今” ―性的マイノリティ女性から見るマイクロアグレッション― |
内容 | 2024年現在、日本で性的マイノリティの認知度は格段に上がっている。ところが、性的マイノリティ当事者はいまだに自殺リスクや不登校の割合が高い。また、出生時に女性と断定された性的マイノリティはこれまで不可視とされていた。このことから本稿は、出生時に女性と割り当てられた20代の性的マイノリティが抱く葛藤を明らかにすることを目的とした。調査は女性として生まれた若い性的マイノリティを対象にインタビューと参与観察を行った。その結果、彼彼女は幼い頃から自己を否定され、現在に至るまで生きづらさを感じていることが分かった。ただしそれはあからさまな差別や侮辱ではなく、日常的に浴びせられるマイクロアグレッションという視点から説明できる。しかし彼彼女は、自己を否定され、自己を隠蔽してきた経験を持ちながらも明るく前向きだった。それは彼彼女らを取り巻く環境の変化やその適応能力により、自己アイデンティティの確立に成功したからだと考察できる。 |
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講評 | 本論文は、性的マイノリティーに属する20代女性に焦点を当て、その内面の葛藤を3名へのインタビューと関西のLGBTQサークルでの参与観察を通して明らかにしようとしたものである。筆者は、この人たちが生きづらさを覚える原因は、公然たる差別や侮辱以上に、日常的なマイクロアグレッションにあると論じている。ただし前者は後者の延長線上にあり、両者の境界を必ずしも截然と分けられないことは、考察・叙述において苦労した点ではないかと思われる。 筆者が接した当事者たちは、それぞれ葛藤を乗り越えて前向きに生きているとのことで、それ自体は結構であるが、話を個人レベルの「ハッピーエンド」で終わらせてよいのかについては疑問が残る。というのも、世界を覆う極右化現象の中で、性的多様性の排撃は重要な指標だからである。本論文作成に際して作り上げた人的ネットワークも生かして、自分自身や当事者たちの今後の社会への向き合い方を引き続き掘り下げてほしい。 |
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キーワード1 | 性的マイノリティ |
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キーワード2 | マイクロアグレッション |
キーワード3 | アイデンティティ |
キーワード4 | 女性 |
キーワード5 |