学科 | 社会学科 | ゼミ教員名 | 森 千香子・木戸 衛一 | 年度 | 2024年度 |
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タイトル | 大学生における繰り返される能力主義の呪縛 -不本意入学者の事例から- |
内容 | 本稿は、不本意入学者が直面する能力主義社会について、8名の大学卒業後の進路選択を経験した不本意入学者にインタビューを行い、その語りから不本意入学の要因、解消の過程、大学卒業後の進路選択の経験について分析を行った。現在、大学入試の過熱により、学歴や偏差値の序列化が加速し、第一志望校に不合格となった不本意入学者が多く生まれている。不本意入学者が、大学入試の経験踏まえ、次の進路選択にどのように取り組み、何を感じるのかについて能力主義との関連に注目し、考察した。 結果として、不本意入学者の多くは大学在学中に競争とは一線を画した学問やアルバイト、友人との人間関係などにより不本意感を解消していることが明らかとなった。しかし、大学3年になると就職活動に直面し、その際に大学入試の時のような競争の世界に取り込まれていく。このように、大学生はメリトクラシー社会の中で、能力主義の呪縛に囚われ続けている。能力主義を前提とした社会を構造自体から変え、序列や学歴ではなく、個人の興味や尊厳を重視するような変化が求められる。 |
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講評 | 本論文は、同志社大学への入学に必ずしも満足していなかった筆者自身の体験を踏まえ、8人へのインタビューを通して、大学在学中はさまざまな理由から不本意感を相対化・解消しているものの、就職活動に直面して再び「能力主義」に囚われてしまう学生の実像に迫っている。筆者は特に明言はしていないものの、本論文には、「自己責任」を盾に、若者の主体的選択に実は縛りをかけ、共に生きる社会や国のあり方を考えたり、経済的・社会的な格差拡大に疑問を持ったりする余地を与えないこの国の新自由主義的な社会システムに対する痛烈な批判が込められている。 他方で、人生において学生時代は価値観や内面の規範を決定的に確立する時期であり、各人がその精神的財産をその後の人生にどのように生かしていこうとしているのか知りたいところである。評者としてはさしずめ、筆者が、就職後今まで以上に業績主義に晒される環境の中で、本論文における根本的問題意識をどのように発展させていくか注目したい。 |
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キーワード1 | 能力主義 |
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キーワード2 | 不本意入学 |
キーワード3 | 学歴社会 |
キーワード4 | 競争 |
キーワード5 | 就職活動 |