卒業論文詳細

学科社会学科 ゼミ教員名森 千香子・木戸 衛一 年度2024年度
タイトル〈多文化共生〉施策における純血主義 ―日本的文化内での〈共生〉の根源―
内容 現代日本では、外国人の増加を背景として多文化共生という言葉が様々な領域で叫ばれている。総務省は、2006年に多文化共生の定義を定め、施策として打ち出した。総務省による〈多文化共生〉施策は、「国籍や民族などの異なる人々」の「対等な関係」を定義の中で謳っている。しかしながら実態として、〈多文化共生〉施策は排外主義的な施策であることが先行研究において示されている。本研究の目的は、排外主義的な〈多文化共生〉施策の根底にある観念を通時的に明らかにすることである。本研究では〈多文化共生〉施策における排外主義の根源には、明治期に創設された純血主義があるという仮説を立てた。純血主義がいかにして〈多文化共生〉施策にまで温存されてきたのかを、本研究では通時的に立証している。具体的には、明治期における排外主義である純血主義とは何か。そして、どのように純血主義と〈多文化共生〉施策は関係しているのか。さらに、〈多文化共生〉施策の根源に純血主義があることは、現代日本において何を意味するのかについて述べている。
講評  本論文は、日本の〈多文化共生〉政策が、その耳触りのよさとは裏腹に排外主義的な本質を持つことを、「純血主義」をキーワードに、さまざまな文献を渉猟して歴史的に検証しようとした野心作である。その根底には、昨今の「外国人」をめぐる幾多のスキャンダルに対する筆者の怒りがあるのではないかと思われる。そもそも戦後日本社会が植民地主義を引きずり、日本国憲法もレイシズムから脱却していない中で、〈多文化共生〉政策も実質的には外国人に対する上から目線の産物に過ぎないことがおおむね説得的に論じられている。
 焦点の「純血主義」であるが、それが特殊日本的な「穢れ」観念の系譜を引くのか、あるいは近代化の過程で日本が最も影響を受けたドイツの血統原理にどの程度影響されたものなのかは、筆者のさらなる考察に期待したい。また世界各地で排外主義が勢いを増している中で、これにいかに抗うか、筆者の留学体験も踏まえた今後の考察にも興味をそそられる。
キーワード1 多文化共生
キーワード2 純血主義
キーワード3 排外主義
キーワード4
キーワード5