内容 |
本稿のテーマは、「工場地区におけるまちづくりの方向性を模索すること」である。
日本の高度経済成長を支えてきた製造中小企業の集積地で、近年少しずつ変化が起こっている。その変化とは集積地内での工場の廃業、転出と跡地での住宅開発である。この〈住工混在〉状況下では、企業経営者は操業環境の制約を受け、新しく移り住んできた住民も時として良好な住環境が得られない。また、工場地区には企業経営者層がいれば居住のみの住民もいて、利害の一致したまちづくり運動を展開することが難しい。筆者は上記の現状を看過できないと考えている。
本稿では、①高井田地区が形成されてきた記憶(=先住の住民に息づく共通観念)を〈可視化〉することによるまちづくり主体の形成、②地区内にある諸資源(=特徴や長所)の活用というところに分析視点を置いている。手順としては記憶の可視化によるまちづくりの成功事例(北海道江別市野幌地区)を取りあげるところから出発する。第2に東大阪市高井田工場密集地区での住工混在の要因や影響を分析する。第3に問題解決のためのまちづくり主体による運動と その意義について考察する。以上のような展開で、自分なりの結論を提示する。 |