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フィリピンの首都マニラでは、実に400万人を超えると言われる貧困層が暮らしている。その多くは1日1ドル以下での生活を余儀なくされ、密集するスラムに身を寄せている。これらのスラム居住者は、一体どこからやって来たのであろうか。あるいは、どのようにして生計を立てているのであろうか。本研究では、以上の問題意識から出発し、都市貧困層を生み出す背景と生活の実態とを、筆者らの関わるケソン市郊外の2地区をもとに考察した。明らかになったのは、以下の諸点である。調査回答者の65.0%は、マニラ首都圏外の地方出身者であった。その多くは10~20代の時に職を求めて移り住んだ若年労働者層である。しかし、マニラにおいては、国内産業の偏狭性から正規の職を得るのは難しく、多くが「インフォーマル・セクター」と呼ばれる都市雑業に従事している。そして、就業機会において重要な役割を果たしているのが、同郷者・親族間のネットワークであった。これらはより大きなつながりには発展しにくいものの、貧困層のセーフティネットとして機能している。データは現地住民へのライフヒストリーの聞き取り、および2008年8月に実施した質問票調査の結果を用いた。 |