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なぜ、物質的に豊かな時代に生きる現代の若者たちが、宗教離れが進んでいると言われる今日の日本において、なお、宗教への信仰を持つのだろうか。それも、既成の伝統宗教ではなく、新しい宗教に多く惹き入れられるのはなぜか。本論文では、これらの問題意識のもと、彼らが如何なる宗教観を有し、社会生活にどのような影響を与えているのかを明らかにするべく、複数の新宗教団体を対象としたフィールドワーク調査を行った。
本調査の結果、現代宗教に入信する若者の動機は、貧しさや病から救いを求めてというよりむしろ、家族や友人をきっかけとして、世俗的問題の解決、人生の目的と使命の模索、あるいは、教団内での人間的つながりを求めて入信する者が多いということがわかった。一方、既成の宗教が若者に受け入れられにくいのは、伝統宗教が新宗教に比べて布教に力を入れてこなかったことや、教え自体が若者になじみにくいこと、伝統宗教のコミュニティ自体が弱体化、高齢化しており、魅力を感じにくいことなどが原因と考えられる。
現代では情報化の進展により、宗教的な価値も個々人が自由に選択できるものとなってきている。そこでは、一部の人々は宗教に魅せられ、また一部の人々は自己啓発系のセミナーや書籍、スピリチュアリティや占いなどの「宗教的なもの」に関心を示す。最近の「スピリチュアル・ブーム」の背景にも、現代人の宗教的感性が見て取れる。 |