内容 |
本稿では、言葉として実際に使用され、それをめぐって研究がなされながら、曖昧である「現実感」という概念について考察する。まず、現実感の言語的な定義を検討する。工学分野である人工現実感の研究や精神医学における定義を基にして、「自分や外界といったある事象について、それが現実のものであるとする感じ」だと現実感を規定した。
続いて、概念として現実感には「知覚」「関心・注意」「真であるという判断」「信念」「当事者性」「強い有意味性、重要性、必要性を見出していること」という性質があることを見出した。また、現実感の類型化を直接的な事象、伝聞した事象、想像という3点から試みる。さらに、現実感のある状態とない状態、そして現実感がある状態の要件を満たしながら現実感が把握されない状態である「把握されない現実感」について考察した。さらに、ある類型の現実感の有無がどのように現れるかということについても考察を行った。
筆者は現実感について、何を現実だとするかということに深く関係しているために、様々な行為をするさいの基盤となるものと捉えている。そのため、この概念を精緻化し、それによる分析が進められるように試みたのである。 |