内容 |
本論文は、絵画市場をネットワーク論によって分析するものである。なぜマーケットをネットワーク論によって分析するのか。それは、芸術の定義が、流動性が高く、時代によってその価値が変化するという特質を持っているからである。また、芸術というものが、先人たちの芸術活動の積み重ねによって語られているからだ。ネットワークとは、人間の行為の積み重ねの歴史によって構築されている。そこで、本論文は画廊を中心とした絵画市場において、過去にどのようなマーケティングがなされ、現在のネットワークが完成したのかを、実際に大阪画廊へのフィールドワークを実施し構造を明らかにしていく。そしてどのようなパーソナルネットワークが市場に影響を与えているのかを記述していく。調査を進めていくと、絵画マーケットは一人の構成員が、作家、美術商、収集家の三つの役割の中から二つ以上の役割を兼任している場合が多く、市場への影響が大きいことがわかった。おもに市場に作用しているネットワークは、名門画廊のネットワーク、大学のネットワーク、出身地のネットワークの三つである。絵画市場においては、他の市場と異なり、贋作の流通が多く、しかも識別が難しい点や、最終的な絵画の価値は個人の主観によると言った理由から、絵画の価値基準が曖昧になっている傾向が見られる。よって、品質保証としてネットワークを重視していると考えられる。現在、絵画市場は多様化が進み混沌の時代を迎えている、という一般的な認識が広がり、マーケットに影響を与えていることは確かだが、旧来の画廊を中心としたネットワークはしっかりと機能を果たしている。
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