内容 |
本論文は学歴社会に関する認識が学習意欲に結びつくか否かについて、親階層の影響に注目して考察するものである。日本の学歴社会の構造としては小・中学校段階の義務教育に加え高校教育の就学率も100%近くになってから久しく、その準義務化がうたわれている。さらに高等教育機会の拡大も手伝い、日本社会における学歴について縦の学歴差以上に横の学歴差の重要性がますます高まっている。こうした状況において、子どもとその親は従来にも増して学歴の差異化競争に加わらなければならなくなる。
本論文では、このような競争で成功するために親の階層が非常に重要であることを突き止めた。競争への参加が学歴社会に関する認識にもとづくと前提する場合、その認識のあり方が階層により異なる可能性が考えられる。そこで階層の影響が経済的な問題なのか、それとも心理的な問題なのかについて考察し、ホワイトカラー層以上の家庭の子どもでは「親階層⇒学歴社会の認識⇒親階層⇒学歴社会の具体化⇒学習意欲」という形で学歴社会認識と学習意欲とが結びつくという仮説を立てた。これはホワイトカラー層に限られた仮説であるが教育機関のバックアップと親の理解とにより学歴社会のイメージを具体化することができれば、ブルーカラー層以下でも、学歴社会の認識を梃子に子どもの学習意欲を向上させることができると考えた。 |