内容 |
本稿では、日本の休暇のありかたを大きく特徴づけている有給休暇の現状を考察し、そこに潜む制度的課題と人々の意識について取り上げている。日本は有給休暇の付与日数が少ないことに加え、その消化率が著しく低く、連続した休暇の少ない国となっている。一方、フランスをはじめ多くの欧州諸国には約1ヶ月に及ぶ長期休暇、すなわちバカンスを楽しむ習慣があり、バカンスは、4~5週間程度付与される有給休暇と、その高い消化率によって実現されている。フランスの人々にとってバカンスは「生きる歓び」であり、生活になくてはならないものとして位置づけられている。
なぜ、日本ではバカンスにみられる「生きる歓び」へとつながるような「休暇」が普及しないのであろうか。日本の有給休暇の消化率の低さに影響している要因について、国際比較を交えつつ、文献を参照しながら考察をおこなった。
バカンスの根底にあるのは、有給休暇制度の成立とその後の発展のなかでフランスの人々が示すようになった「休暇への強い意志」であり、日本においてはこうした意識が社会全体を通して育まれていないのである。日本でも「生きる歓び」としての休暇を享受するには、自ら積極的に「休暇」を意味づけていくことが必要とされるだろう。
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