内容 |
「帰国生(一般的には帰国子女と呼ばれるが、本稿では帰国生と呼ぶ)」に対するイメージは人それぞれだろう。帰国生は、「英語を容易に話すことができる」「外国人のように誰とでも気軽に話すことができる」などと、思われがちであるが、実際には一般生に大きな違いはない。本研究は、そのことを証明するために帰国子女受け入れ校の中学生102名にアンケート調査を行なった。分析方法は、帰国生と一般生で社交性や授業の取り組み方などの視点から、比較を行なった。その結果、帰国生と一般生で比較を行なっても、社会的スキル、学習意欲、文化的アイデンティティなどに大きな違いは見られなかった。そこで、帰国生だけでコントロールして比較を行なったところ、居住地域や海外在住期間で比較を行なっても、意識や行動に差はみられなかった。
その中で、帰国生が海外で通っていた学校の種類(現地校・日本人学校)で比較を行なったところ、授業の取り組み方で積極性に違いがみられた。その要因に日本人学校は、海外にあるものの日本の学校に通うことと、ほぼ同じ学習環境、学習スタイルだということが挙げられる。また、帰国後の経年年数別でも差がみられたことから、帰国してからの月日が長くなることで、再び日本人らしさを内面化する傾向があることが発見された。本研究は、イメージの中の帰国生と実際の帰国生とは異なり、彼/彼女らの国外経験、条件によって日本育ちの生徒と全く変わらない者もいれば、異なる意識、行動の者もいるという、その多様性を明らかにした。 |