内容 |
本稿は、実際に私が所属しているCOI(ネット上で特定の関心を中心に集まるコミュニティ)のメンバーの関係がどのようなものかを考察して、若者の友人関係の選択化論のいう、これまでの常識的な感覚では思いもよらぬ「親しい」関係の一例を示したものである。
メンバーは、お互いに顔・名前といった基本的な個人情報すら共有しないまま、そこで他では出せない“オタク”な自分を遠慮なく見せて、それを承認し合うことで信頼が築き、「親しみ」を感じるようになった。その過程では、ネット上のコミュニティやCMCの特徴が生かされている。
だが、その信頼はオタク同士の部分的な共通項の上に成り立つもので、共通項以外のことについての「内面的な自己開示」は促さない。さらにネット上のコミュニティやCMCがもつ特徴もそうした自己開示を妨げる要因となっている。そのため、「親しみ」を感じる一方で、お互いに踏み入り合わない領域も存在している。だが、メンバーとの関係のなかで責任を負わずにすむ気軽さの方が好ましいので、そうした領域の存在は問題ではなく、それが「親しさ」に水を差すようなこともない。こうした関係もまた、今の若者にとっては「親しい」関係になのである。
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