内容 |
朝鮮半島が日本の植民地から解放され、約70年が経とうとしており、日本には今日その子孫たちである、一般的に「在日」と呼ばれる特別永住者の数が385,232人いる。2002年日韓共同開催で行われたFIFAワールドカップからはじまり、韓国ドラマやK-POPなど長きにわたり「韓流ブーム」が継続し、韓国に好意的な注目が集まっている。しかし、その反面あらゆるメディアによる「北朝鮮バッシング」、「竹島問題」、ネットの普及によって「在特会」などという団体までもが存在し、「アンチ朝鮮半島気運」が漂っている。従来の差別や偏見とは少し違う、在日朝鮮人にとって新たな難しい局面を迎えているように思う。このような生きにくい日本社会で、なぜ在日朝鮮人は「在日朝鮮人として」生きているのだろうか。在日朝鮮人研究は多くあるものの、民族教育経験者とりわけ朝鮮学校出身者への研究はほとんど見受けられない。本稿では、朝鮮学校卒業生である在日朝鮮人三世、四世にあたる若者6人にインタビュー調査を行なった。その調査を元に、一般的に「多様化」しているという在日朝鮮人の若者がどのようなアイデンティティを持ち、暮らしているかを明らかにした。そこには一言で「多様化」とは言えない、複雑化したアイデンティティが存在した。民族教育を経て日本社会で暮らす彼/彼女らの、さまざまな問題、葛藤が浮かび上がった。 |